「政府発行の証明書があるのに、なぜ日本でまた検疫が必要なのか」
「動物検疫は何日も止まると聞いて不安」
タイなど海外から豚肉加工品を日本へ輸入する際、
多くの輸入事業者がこうした疑問や不安を抱えます。
特に、
- フリーズドライ製品だから簡単に通関できると思っていた
- 原産地証明書(EPA)があるので問題ないと誤解していた
- 書類は到着後にまとめて出せばよいと思っていた
といった認識のズレが、
通関遅延・保管料増加・最悪の場合は積戻しにつながることも少なくありません。
本記事では、
HS160249(豚肉の調製品)をタイから輸入するケースを前提に、
- 必要書類の整理
- DLD証明書と日本の動物検疫の関係
- 通関までに要する現実的な日数
- 実務で注意すべきポイント
を、輸入初心者〜中級者向けに中立的な立場で解説します。
食品輸入全体の流れを整理したい方はこちらの記事をご参照ください。
→ 食品輸入の手順を図解で解説|初心者が最初にやるべき7ステップ
今回の記事で想定する輸入条件
- 商品:フリーズドライ豚肉チップ
- 用途:人用食品
- 原産国:タイ
- HSコード:1602.49
- EPA:日タイEPA(JTEPA)利用を想定
※ 本記事は上記条件を前提としています。
製品仕様や用途(例:ペットフード)によっては制度が異なります。
タイ産フリーズドライ豚肉の主な必要書類
輸入・通関で必要となる代表的な書類
| 書類名 | 主な役割 |
| インボイス | 価格・品名の確認 |
| パッキングリスト | 数量・重量の確認 |
| B/L・AWB | 輸送の証明 |
| DLD証明書 | 動物検疫用 |
| 食品等輸入届出 | 食品衛生法対応 |
| 原産地証明書(JTEPA) | 関税優遇(該当時) |
こちらの記事で関連書類詳しく解説しています。
→ 食品等輸入届出書の書き方【記入例つき】
→ 食品輸入における原産地証明書(COO)完全ガイド
DLD証明書とは何か(正式名称と役割)
DLD証明書とは、
**タイ畜産局(Department of Livestock Development:DLD)が発行する
Veterinary Health Certificate(動物衛生証明書)**です。
この証明書では主に以下が確認されます。
- 原料が豚由来であること
- 家畜伝染病の管理下にある原料・施設であること
- 日本向け輸出が認められた施設で製造されていること
- 加熱温度・時間などの製造工程が明示されていること
👉 DLD証明書は、
日本で動物検疫を受けるための前提書類であり、
これ自体が「検疫免除」を意味するものではありません。
DLD証明書があっても日本の動物検疫は必要?
結論|日本到着後の動物検疫は必須
豚肉および豚肉加工品は、
日本では家畜伝染病予防法に基づく指定検疫物です。
そのため、
- 輸出国(タイ)での確認・証明(DLD)
- + 日本到着後の動物検疫(農林水産省 動物検疫所)
という二段階の検疫手続きが法律上求められます。
DLD証明書があることで、
日本の動物検疫が書類審査を中心に進められるという位置づけになります。
動物検疫・食品届出・税関の役割の違い
初心者が混乱しやすい点として、
「検疫」という言葉が複数の制度で使われていることがあります。
| 手続き | 管轄 | 目的 |
| 動物検疫 | 農林水産省(AQS) | 家畜衛生・疾病防止 |
| 食品等輸入届出 | 厚生労働省(検疫所) | 食品安全・成分規制 |
| 税関通関 | 財務省(税関) | 課税・輸入許可 |
👉 同じ空港・港でも担当部署と目的は異なります。
動物検疫から通関までの所要日数の目安
一般的な日数感(あくまで目安)
| 状況 | 所要日数の目安 |
| 書類に問題がない場合 | 当日〜翌営業日 |
| 確認・照会が入る場合 | 1〜3営業日程度 |
| 条件不適合の場合 | 不合格(積戻し・廃棄) |
※ 実際の所要日数は、
到着港、検疫所の混雑状況、申請時間帯、事前相談の有無などにより前後します。
通関を円滑に進めるための提出タイミング
| 書類 | 推奨される提出時期 |
| DLD証明書(写し) | 船積み後すぐ(事前相談用) |
| 食品等輸入届出 | 到着2〜3日前 |
| DLD証明書原本 | 到着時 |
この流れで進めることで、
到着当日〜翌日引取が可能になるケースもあります。
実務で注意すべきポイントとよくある誤解
初心者が誤解しやすい点
- 「フリーズドライ=加熱不要」と思い込む
- DLD証明書の加熱条件が抽象的な表現になっている
- HS160249で必ず通ると決めつける
- 原産地証明書があれば関税が必ず下がると思う
※ HSコードの最終判断は税関が行います。
製品仕様により分類が変わる可能性があります。
まとめ|タイ産豚肉加工品輸入の実務ポイント
- DLD証明書は動物検疫の前提書類
- 日本到着後の動物検疫は必ず必要
- 加工品であれば検疫は比較的短期間で終了する傾向
- 事前提出・事前相談が通関スピードを左右する
- 制度判断は最終的に行政機関が行う
👉 「早く通す」より「止まらない準備」が最重要
参考資料
- 農林水産省 動物検疫所
https://www.maff.go.jp/aqs/ - 厚生労働省 食品輸入手続き
https://www.mhlw.go.jp/index.html - 日本税関
https://www.customs.go.jp/ - タイ畜産局(DLD)
https://www.dld.go.th/


