食品輸入ビジネスを始めたばかりの方はもちろん、実務に慣れてきた中級者でも、
**「届いた商品に傷みがある」「数量が合わない」「温度管理が不十分だった」**といったトラブルは頻繁に発生します。
たとえば、海外から冷凍食品を輸入した際に、
- 注文したケース数が不足していた
- 賞味期限が想定より極端に短かった
- 外箱破損により中身が解凍・劣化していた
といったケースは決して珍しくありません。
こうしたトラブルは、初動対応の速さと記録の正確さによって、
サプライヤー交渉・保険求償・返品対応の成否が大きく変わります。
本記事では、食品輸入に特化して、
品質・数量トラブル発生時の実務対応フロー、保険請求の考え方、倉庫担当やサーベイヤーの役割、そして防止策までを、初心者にも分かりやすく解説します。
※この記事は、食品輸入の基本的な流れを理解している方向けの実務解説です。
まだ全体像を整理できていない場合は、
👉 【図解】食品輸入の流れを初心者向けに完全解説|申告・関税・NACCSまで
を先に読むことをおすすめします。
食品輸入でよくあるトラブルと原因
品質違い・不良品トラブル
食品輸入で最も多いのが、品質に関する問題です。
主な内容
- 色・形・サイズ・味・香りが仕様と異なる
- 冷凍・冷蔵食品の解凍、変色、異臭
- 包装破損による内容物の劣化
主な原因
- 海外工場での生産ミス・品質管理不足
- 輸送中の衝撃、温度変化(コールドチェーン断絶)
- 出荷前・荷受け時の検品不足
特に冷凍食品では、温度逸脱があると保険求償や返品交渉でも証拠不足になりやすいため注意が必要です。
数量違い(不足・過剰)
主な内容
- 注文数量より少ない(または多い)
- ケース単位では合っているが中身が不足
主な原因
- 海外倉庫・工場でのピッキングミス
- 輸送途中での紛失・盗難
- インボイスやパッキングリストと現物の不一致
数量トラブルは、通関書類との整合性にも影響するため、早期発見が重要です。
検疫・衛生トラブル
食品輸入特有のリスクとして、検疫・衛生面の問題もあります。
主な内容
- 食品衛生法違反による不許可・廃棄
- 冷凍・冷蔵温度管理基準の不適合
- ラベル表示(原材料・原産国等)の不備
詳しくは、厚生労働省の輸入食品監視体制も参考になります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu/index.html
食品輸入で必須の検疫や手続きの詳細は、こちらの記事でまとめています。
→ 食品輸入の必要手続きと検疫の流れを徹底解説
トラブル発生時の実務対応フロー(保険求償を見据えて)
荷受け時点でのチェック(最重要)
貨物到着時、倉庫担当者(自社・外部倉庫)による初動対応が極めて重要です。
必須チェック項目
- ケース数・数量
- 外装破損の有無
- 冷凍・冷蔵状態(霜付き・解凍痕)
- 賞味期限・ロット
実務ポイント
- 開梱前・開梱中・開梱後を写真・動画で記録
- 倉庫担当者に「異常があれば即連絡」ルールを徹底
- 温度記録計(データロガー)があれば必ず保存
👉 この初動記録が、後の保険金請求やサプライヤー交渉の証拠になります。
サプライヤーへの連絡・交渉
トラブル確認後は、事実を整理して文書で連絡します。
連絡内容の例
- 注文数量:50ケース
- 到着数量:45ケース
- 不良:3ケース包装破損・内容物劣化
実務ポイント
- 写真・動画を必ず添付
- 感情論ではなく事実ベースで記載
- 再送・返金・値引きなど希望対応を明確に
保険求償(保険金請求)の流れ
輸送中の破損・数量不足が疑われる場合は、海上保険(運送保険)による保険求償を検討します。
一般的な流れ
- 保険会社・保険代理店へ事故通知
- 必要書類の提出(B/L、インボイス、写真等)
- サーベイヤー(損害鑑定人)の立会検査
- 損害額確定 → 保険金支払い
サーベイヤーは、貨物の損傷原因・程度を第三者として客観的に確認する重要な役割を担います。
倉庫での現物保存や、開封状況の記録が不十分だと、保険金が減額・不支給になるケースもあります。
海上保険の基礎は、JETROの解説も参考になります。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/trade_1108.pdf
通関・検疫との連携
不良品の返送・廃棄・数量訂正を行う場合、通関・検疫手続きにも注意が必要です。
- 輸入許可後の返品には税関への相談が必要
- 食品廃棄時は保健所・税関への届出が必要な場合あり
税関の基本Q&Aはこちらが参考になります。
https://www.customs.go.jp/tsukan/index.htm
トラブル防止のための事前対策
契約書・注文書の明確化
- 納品数量・許容誤差
- 賞味期限の最低条件
- 温度管理条件(例:-18℃以下)
- 不良・不足時の責任範囲と対応方法
書面で合意しておくことで、トラブル時の交渉が圧倒的に楽になります。
サンプル確認・出荷前検品
- サンプル承認を必ず実施
- 現地検品会社の活用(特に中国・ASEAN)
- 出荷前写真・検品レポート取得
保険・輸送管理の徹底
- 海上保険は「ICC(A)」など補償範囲を確認
- 冷凍・冷蔵輸送では温度記録必須
- 倉庫担当・フォワーダーとの連携強化
食品輸入トラブル対応完全ガイド まとめ
- 食品輸入トラブルは荷受け時の初動対応が最重要
- 倉庫担当者のチェック・記録が、保険求償の成否を左右
- サーベイヤー立会いを想定し、現物・証拠を保存
- 契約・検品・保険・通関書類を事前に整備して未然防止
- 食品は特に「賞味期限・温度・衛生」リスクが高い
記録を残し、関係者(倉庫・通関業者・保険会社)と連携することで、
返品・再送・保険請求をスムーズに進めることが可能です。
参考資料
- 財務省 税関「輸入通関Q&A」https://www.customs.go.jp/
- 中小企業庁「海外取引のトラブル対応ガイド」https://www.chusho.meti.go.jp/
- JETRO「食品輸入の品質管理・検査ガイド」https://www.jetro.go.jp/
- 厚生労働省「食品衛生法と輸入食品の検査」https://www.mhlw.go.jp/


