本記事は、
・企業が海外展示会・開発用途で食品サンプルを持ち込む場合
・輸入実務担当者・営業担当者
を主な読者として想定しています。
はじめに
本記事は、日本国内の空港検疫所における食品サンプルの持込み実務について、
法令条文の解説ではなく、実務現場でどのような判断がなされやすいかを整理したものです。
記載内容は、検疫所・税関・通関業者(乙仲)との事前調整を多数行ってきた経験に基づく
一般的な運用傾向の整理であり、
特定案件についての許可・免責・結果を保証するものではありません。
最終的な判断は、必ず管轄の検疫所・税関の指示に従ってください。
結論の要約(まず押さえるべき実務整理)
実務上の結論
展示用・社内評価用・試験用・廃棄前提の食品サンプルにおいても食品である以上、原則として税関への輸入申告が必要です。
また、食品等輸入届出についても原則対象となりますが、展示用・評価用等のサンプルについては、
用途・数量・管理実態により届出不要として扱われることがあります。
主なリスク
判断を誤った場合、空港での差止め、廃棄となる可能性があり、
その後のサンプル輸入や検疫所との信頼関係に影響します。
なぜこのテーマは毎回混乱するのか
実務現場では、次のようなやり取りが頻繁に発生します。
- 「売らないので申告不要ですよね?」
- 「ハンドキャリーならNACCSはいらないですよね?」
- 「食品届出も不要と聞きました」
混乱の原因は明確です。
「申告」という言葉が、異なる意味で使われているためです。
本記事では、現場で使われる意味に限定して用語を整理します。
最初に固定すべき用語整理(重要)
実務上の整理
- 輸入申告不要 = NACCSによる輸入申告が不要
- 食品届出不要 ≠ 輸入申告不要
この2点は別のレイヤーの話であり、混同すると実務事故につながります。
本記事でいう「輸入申告不要」とは、
NACCSを用いた通常の商業輸入申告を要しないケースを指します。
ただし、税関への申告行為自体が不要になるわけではありません。
また、食品等輸入届出は、原則として食品を業として輸入する場合に求められる手続きであり、
展示用・評価用等のサンプルについては、用途・数量・管理実態により
届出不要として扱われることがあります。
※NACCSについては、本記事では「輸入申告を行うための電子申告システム」という位置づけに留めます。
仕組み・操作・実務対応の詳細は、理解レベル別に以下で整理しています。
- 【初心者向け】NACCSとは?仕組みと流れ
- 【実務者向け】NACCS操作と用語の実務ポイント
- 【上級者向け】修正申告・エラー対応・高度操作
実務で使われる「非該当」という言葉の正体
実務現場でいう「非該当」とは、
ある法令・制度・届出について
「対象かどうか」を確認した結果、
その制度の適用対象に当たらないと整理される状態
を指す実務上の表現です。
これは、
「本来は対象だが免除される」
「手続きが簡略化される」
といった意味ではなく、
そもそもその制度の判断枠に入らない
という位置づけになります。
食品サンプル輸入においては、
「食品ではないから非該当」なのではなく、
用途・数量・管理実態を踏まえ、
食品等輸入届出の対象外として扱われる
という意味で「非該当」という言葉が使われるのが実情です。
そのため、
非該当=輸入申告不要、ではなく、
非該当であっても輸入申告は原則必要であり、
この点を誤解すると実務上のトラブルにつながります。
判断軸①:「輸入申告不要」とは何を指すのか
本記事でいう「輸入申告」とは、
税関に対してNACCSを用いて行う通常の輸入申告を指します。
実務上は、
- 輸入申告不要
- NACCS申告不要
は同じ意味で使われることが多いのが実情です。
ただし、これは全てのケースに当てはまる絶対ルールではなく、
一定条件下での運用整理である点に注意が必要です。
判断軸②:食品届出不要と判断されやすい食品サンプルの条件
実務上、食品届出不要として扱われやすいのは、
次の条件が総合的に満たされている場合です。
実務で重視される典型条件
- 用途が展示用・評価用・試験用である
- 無償である
- 販売・配布を行わない
- 社内管理のもとで使用し、最終的に廃棄する前提
- 数量が明らかに商業規模ではない
- 持込み理由・用途説明に一貫性がある
この場合は、乙仲に確認願いを提出し、食品届出不要で輸入申告をしてもらう場合があります。
確認願いは法令上の制度ではなく、
届出対象外であるとの判断を輸入者責任で明確化するための実務上の書面です。
※食品届出不要でも輸入申告は原則必須です。ここを履き違えると違反リスクが高いです。
判断軸③:ハンドキャリーは「楽」ではなく「責任が重い」
ハンドキャリーは簡単という誤解がありますが、
実務的には逆です。
実務上の位置づけ
- 通関手続きを省略できる可能性はある
- その代わり、説明責任はすべて持込者本人
書類があっても、
- 本人が説明できない
- 用途説明が曖昧
この時点で、その場で判断が覆ることがあります。
判断軸④:例外的に「申告不要」に近いケース(かなり限定的)
販売・評価・研究目的でない場合に限り:
・自己消費用
・少量
・持込禁止品に該当しない
・食品衛生法上の届出対象とならない、
もしくは届出を要しない取扱いとなる場合
旅行者個人が持ち込む少量の食品のみ免税・持込制限の範囲内での取扱いとなります。
※企業用途・業としての輸入には原則該当しません。
ハンドキャリーの輸入申告の流れ(全体像)
1.出発前に書類や商品情報を準備
2.入国時に税関で申告
3.食品衛生法の確認・届出
4.必要に応じて検査→許可
5.国内持ち込み
ハンドキャリーでも通常の輸入と同じ流れとなります。
食品輸入の全体の流れを整理したい方はこちらの記事をご参照ください。
👉 関連:[食品輸入の手順を図解で解説|初心者が最初にやるべき7ステップ]
👉 関連:[食品輸入の必要手続きと検疫の流れを徹底解説]
出発前に必ず準備するもの(ここが一番重要)
- 商品リスト(商品名・原材料・内容量・数量・用途)
- 成分表・原材料表(アレルゲンが分かるもの)
- 製造者情報(製造者名・住所・国)
- 価格情報(無償でも「参考価格」が必要)
👉 食品衛生法の確認をする際に必要な情報となります。
機内で「携帯品・別送品申告書」を記入
入国前に機内で配られる紙です。
・「食品を持ち込んでいますか?」→ 必ず「はい」
・備考欄に → 「Food samples(not for sale)」
この申告書で「いいえ」にすると無申告扱いになります。
※関税法違反・食品衛生法違反のリスクがあります。
ハンドキャリー食品サンプルの取り扱いまとめ
- 輸入申告不要とNACCS不要は、実務上は同義で扱われることが多い
- 食品届出は別レイヤーの話
- 判断基準は「用途 × 実態 × 説明可能性」
- ハンドキャリーは責任が重く準備が全て
Q&A(実務でよくある質問)
Q. 数量が10kg以内なら必ず食品届出申告不要ですか?
A. いいえ。数量よりも用途説明が優先されます。
Q. 金額はいくらまでですか?
A. 金額基準は使われません。商業性の有無で判断されます。
Q. 個人が持ち込む場合は?
A. 企業用途であれば、企業管理下であることの説明が求められます。
※本記事は、主に企業用途の食品サンプル輸入を前提に整理しています。
個人名義で少量の食品を輸入する場合は、
適用される手続きや関税の考え方が異なります。
個人での少量サンプル輸入や、簡易的な関税軽減の考え方については、
以下の記事で別途整理しています。


